幸せな未来は「ゲーム」が創る?


ジェイン・マクゴニガル著『幸せな未来は「ゲーム」が創る』を読んでいる。
原題は"Reality Is Broken: Why Games Make Us Better and How They Can Change the World"。


この本、なかなかズルイ。

何がズルイのかというと、原題にある通り、Reality(現実) vs Game(ゲーム)という構造をつくることで、ずいぶんとゲームの地位を格上げしているところ。

「ゲームに比べて、現実は不完全」というフレーズも出てくる。

確かにそのような言い方もできるかもしれないが、現実の不完全な部分を捨て、純度を極限にまで高め、想像力によってパワーアップさせたゲームに対して、現実は多くの問題を抱えており不完全でゲームより劣っているのだ、というような展開の仕方はちょっと強引過ぎると思う。


だからと言って、ツマラナイ本かというとそんなことはない。

ゲームがなぜ人を魅了するのかという理由を分析し、そのエッセンスを社会にうまく取り入れることで現実の問題を解決することが著者の目指していることで、実際に進行している試みがいくつも紹介されている。その分野は、行政、医療、教育の現場に加えて、伝統的メディアやマーケティング、アントレプレナーシップ、さらには世界平和にまで至る。

ゲームの中には現実を良くするためのヒントが詰まっている、という着想からはじまった行動は、すでに現実を変えつつあるようだ。


読書会で「ゲームに対して悪い印象を持っている人は多く、それに対してゲームの良い面に注目してもらうために、著者のスタンスをしっかりと固定し、意図的に強い言葉を使っているのではないか」というようなコメントがあったが、たぶんそうなのだろう。

そういうわけで、ちょっと気になるレトリックが多いものの、ユニークな発想と大きな可能性が詰まった本だと思う。


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・TEDでの講演:ジェーン・マゴニガル 「ゲームで築くより良い世界」
(Jane McGonigal: Gaming can make a better world)
http://www.ted.com/talks/lang/ja/jane_mcgonigal_gaming_can_make_a_better_world.html

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