ウロボロスの蛇 ― 『宇宙は何でできているのか』


『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』(村山 斉著)を読んだ。

宇宙のすべての物質は原子でできているものだとばかり思っていたので、結構な勢いでびっくりした。

星やガスなど宇宙にあるすべての原子をかき集めても、宇宙の全エネルギーの4.4%程度にしかならず、約96%は「原子以外のもの」でできていることが2003年にわかったらしい。

残りの96%が何かはまだわかっていないが、23%は「暗黒物質(ダークマター)」、そして73%が「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」と名前が付いている。 何だかわからないものの存在がなぜわかるのかと言うと、暗黒物質を仮定しないと、太陽系は天の川銀河に留まっていることができず、暗黒エネルギーを仮定しないと、宇宙が加速しながら膨張し続けていることが説明できないからだそうだ。

素粒子物理学の世界では、まず「こういうものがあれば辻褄が合う」というアイデアが提示され、その理論に基づいて新たな粒子が発見される、ということが珍しくなく、「ニュートリノ」も、それが存在しなければ、ある現象が「エネルギー保存の法則」と矛盾することから「存在するはずだ」と考えられ、のちに発見された。

というわけで、「宇宙にはまだまだ謎がたくさんある」「こんなにもわからないことがある」ということがわかったことが、20世紀末から21世紀の初めにかけての現代物理学の成果とのこと。

宇宙は10の27乗メートル、素粒子は10のマイナス35乗メートル。

この途方もないスケールが、われわれの存在する自然界の「幅」であり、その両極端に位置するようにみえる宇宙と素粒子の2つの世界が、実は、ギリシャ神話に登場する自分の尾を飲み込んでいる「ウロボロスの蛇」のようにつながっているという不思議。素粒子物理学の進歩が宇宙を解明していく。

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