チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷


塩野七生著『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』を読んだ。

そもそも、惣領冬実さんの漫画『チェーザレ 破壊の創造者』(既刊の1~8刊)を読んだのが、この本を読もうと思ったきっかけ。漫画の方はまだまだ話が進むのに時間が掛かりそうで、とりあえず先を知りたい、というのと、塩野七生さんの本は、これまでに何冊か読んで親しんできた、ということもあって。

さて、読み終わって思うのは、チェーザレ・ボルジアというのは、やっぱり掴みにくい人物だ。相当な切れ者なのはわかった。格好いいのもわかった。しかし、その完璧なまでの残虐さは何なんだろうか。それゆえ敵が多いのは当然として、一方で、なぜ人気も絶大だったのか。当時の政治の状況から何となく理屈ではわかるのだが、どうも感情的にはしっかりと捉えられない。

チェーザレは行動の人であると同時に、寡黙な人である。塩野七生は、チェーザレの内面的な描写を極めて少なくし、その周辺を丁寧に描くことで、チェーザレを浮かび上がらせるような書き方をしているように思える。しかし、チェーザレの輪郭ははっきりしても、その内側はやはり暗闇のままだ。

チェーザレの野望が、夭折によって未実現に終わり、彼の内面が永遠の暗闇として残されたことこそが、そのあとの時代に生きる人間にとって、彼の魅力となっているように思える。

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チェーザレについてムチャクチャ詳しいサイトを見つけた。すごいな、このサイト。

・チェーザレ・ボルジアとその周辺
http://cesareborgia.ciao.jp/

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