天使


久しぶりにドッシリとした小説を読もうと思い、だいぶ昔に『バルタザールの遍歴』で非常に感動させられた佐藤亜紀さんの『天使』を選んだ。大正解だった。

圧倒的な筆力から来る疾走感がたまらない。五感に加え、もう一つの「感覚」(あ、この小説に出てくるのです)まで総動員して読むことになるので結構疲れるが、そんなときはパーリンカ(これも、この小説に出てくるハンガリー産の蒸留酒)でも飲んで寝ればいい。

この本は二度読むと二度目がたまらなく面白い。一度目を読み終わった瞬間に二度目に掛かるべし。

小説の要約は無意味だろうし、解説できる力はないから、やめておきます。

ちなみに、著者は、自らのことを「大蟻食」と言い、ボクの大好きな作家であるカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を2006年度のワースト作品とこき下ろす、ちょっと厄介そうな方(スミマセン・・・)なのだが、彼女の小説は大好きです。

以下、自分用の覚え書き。

■各章の内容と登場人物

1.ブダペストの屋根裏部屋。ウィーンの舞踏会。
顧問官、コンラート、大公、ディートリヒシュタイン、ギゼラ

2.ペテルブルクの無政府主義者。仲間の死と宿敵。ベオグラードの友情と裏切り。
アルカージナ、メザーリ、ヨヴァン、イェレーナ、ザヴァチル

3.拒否。講和または陰謀。二組の母と子。
ケーラー、レオノーレ、ダーフィット、ラッケンバッハー夫人

4.父と子の晩餐。死の翼との対決。
ドローネー、ライタ男爵、ゼルカ、ヘーレンファーン、メザーリ、フローラ

■パリでの晩餐のメニュー(あまりに美味そうだったので・・・)
・シャンパンと白いアスパラガス
・甲羅に身を解して盛り付けた蟹
・コンソメスープ
・蝶鮫と金色をした濃い白葡萄酒
・香草をまぶして外側を焼いてから、灰に埋めてじっくり火を通した羊

■気になった台詞・描写
「目的地は」「ペテルブルクです。兄がいるので」 p.63
心が蕩けるほど甘美で贅沢なものを貢がれては無政府主義者の女もけして嫌な顔はできない(アルカジーナ)p.69
「哀れっぽいことを言うのね。あなたが拒否したのは、ヴェチェイ伯の名前も、ギゼラも、私たちも、あなたに値しないからよ」(レオノーレ) p.186

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