Twitterマーケティング vs メールマーケティング

Tumblrのエントリ(2009/10/28)からサルベージ。
----------------------------------------------------------------------------------------------------

企業のマーケティング活動にTwitterがどのように活用できるかは、まだまだ模索段階だし、どれだけの効果を上げられるかは、どこまでこのサービスが普及するか、また使われ続けるかに依存する部分も大きい。

だが、マーケティングに関わる方ならば、Twitterというサービスの理解や情報収集は行っておいた方がいいだろうし、さらには実験的に活用してみてもよいタイミングになってきているのではないかと思う。

そこで、Twitterマーケティングを行う上でポイントとなりそうなTwitterの特徴や、Twitterマーケティングの可能性について、Twitterと似ている点も多いお馴染みのツール、メールと比較しつつ考えてみたい。


■プッシュ型ツールとして優れているTwitter

Twitterとメールが似ているのは、インターネットを介してプッシュ型のコミュニケーションを行えるツールである点だ。つまり、情報の発信側が好きなタイミングを選んで受信側に情報を届けることができる。

プッシュ型のツールは、強力であるがゆえに、場合によってはユーザーにとって非常に迷惑なものになりかねないため、あらかじめユーザーから許諾(パーミション)を得ることが求められる。

しかし、メールの場合は、メールアドレスさえわかれば、パーミションを得ていなくてもメールを送ることができてしまう「仕様」のため、迷惑メール(スパムメール)の問題が発生し、これがメールの最大の欠点となっている。

それに対して、Twitterでは「フォロー」や「ブロック」などの機能により、基本的にはこの問題を回避しており、このこともTwitterがユーザーから高い評価を得ている1つの理由になっている。


■情報を拡大伝播するRT(ReTweet)の凄さ

Twitterでよく使われる作法の一つに「RT」がある。RTはReTweetの略で、他の人の「つぶやき」を、自分のフォロワーに転送することだ。「回覧」と言った方がわかりやすいかもしれない。

メールの転送(フォワード)に似ているところもあるが、決定的に違う部分がある。それは配信数と頻度の違いからくる情報の拡散力だ。

メールの場合、たいてい1人または数人を選んでメールを転送することが多いのに対して、Twitterの場合は「RT」はフォロワーへの全配信(何という大胆な仕様!)となるため、もしフォロワーが100人なら100人に、10万人なら10万人に転送されることになる。

このような仕組みになっているために、たとえ自分自身のフォロワー数が100でも、その中にいるフォロワー数10万の人がRTすれば、1万100のユーザーに情報が伝達されることになる。そしてRTされたものが、またさらにRTされ・・・と広がっていく。

頻度についても、メールの転送とTwitterのRTでは、大きな違いがある。

Twitterでは気軽にRTすることを許すカルチャーがあり、Twitterでの「つぶやき」のかなりの部分をRTが占めているという状況だ。この結果、RTの頻度は、メールの転送頻度よりも段違いに高い。

メールマーケティングでは、リスト数は情報伝達のボリュームを示す重要な指標の1つだが、Twitterマーケティングでは、フォロワー数以上に、RTも含めた到達数の方が指標として重要になるだろう。


■個人情報を持たない気軽さ vs 持つからこそできるマーケティング

Twitterにおいては、企業側で個人情報を管理する必要がない。このこともTwitterのメリットとされている。

確かに、個人情報の取扱には細心の注意が必要であり、個人情報を管理する企業にはコストとリスクが発生する。

個人情報を活用せず、均一的なコミュニケーションによって「見込客の顧客化」を主目的にメールマガジンを配信している企業は多く、この目的においては、Twitterの普及次第では、Twitterはメールを超える可能性がある。

しかし、一方で、個人情報を持っているからこそ可能なコミュニケーションもあり、一人ひとりとの個別のコミュニケーションが重要となる「顧客との関係強化」においては、Twitterよりもメールの方が適している場合も多そうだ。

RFM分析の結果によりあるセグメントのみに情報を送ったり、カタログ請求者や商品購入者への個別フォローとなると、Twitterよりもメールに軍配が上がる。

メールの場合とは方法や業務プロセスは違うが、Twitterでも、インタラクティブなやり取りを行ったり、ユーザーサポートに活用したり、というやり方で「顧客との関係強化」を行うことはできる。目的によりメールとTwitterを使い分ける必要がある。


■リアルタイム性の高さと、リアルタイムな情報発信の違い

Twitterはリアルタイム性が高いと言われる。個人的な体験として、地震発生の時、衆議院選挙の時、ad:tech Tokyo 2009の時、オリンピック開催国決定の時など、確かにTwitterにはとてつもない「リアルタイム性」を感じた。

だが、それはリアルタイムに情報を発信する人と受信する人がすでに「つながっている」場合の話であって、情報をリアルタイムに伝える、つまり、発信したものを受信させる手段としては、Twitterよりもプッシュする力の強いモバイルメールの方が上だ(電話の方がさらに上)。

もっとも、モバイルメールの場合は、プッシュする力が強いがゆえにユーザーに鬱陶しいと思われやすく、またユーザー側の料金発生などの問題もあるので、情報を厳選したり、頻度を少なめにコントロールしたりする必要がある。

やはり、ここでも、それぞれのメディアの特性が活きる活用方法を考えることが重要だ。


■伝える情報の「量」「頻度」の違いとTwitter独特の「ゆるさ」

メールでは、ある程度の情報を1通にまとめて送るのが一般的であるのに対して、Twitterではそもそも「つぶやき」が上限140字の文字情報のみに限定されているため、1回あたりの情報量は非常に少ない。

一方で、Twitterでは、わざわざ電話やメールでは普通伝えないような些細な情報でも「つぶやき」として許容されるカルチャーがあり、メールよりもかなり多頻度での情報発信が許される傾向にある。

これは、自由にまた簡単にフォローしたりフォローを外したりできることから生じるTwitterの「ゆるさ」だが、企業が活用する場合には、そのような「ゆるさ」にも細心の注意を払う必要がある。

「ゆるさ」を排除し過ぎるとツマラナイと思われ、「ゆるさ」が過ぎると企業イメージを損うリスクがあり、繊細なバランス感覚が求められる。


■Twitterでは「つぶやき」のストリームから生まれてくるイメージを重視すべき

Twitter は少量多頻度のコミュニケーションプラットフォームとなるが、1回1回の「つぶやき」を個々に捉えるのではなく、数回の「つぶやき」のストリーム、さらには「つぶやき」のストリームから生まれてくるイメージを、いかに形づくるかがポイントになるのではないか。

Twitterユーザーは、その企業のブランドイメージそのものとまったくズレのないコミュニケーションを期待しているのではなく、ブランドイメージよりももっとフレンドリーでフランクな、それでいて良識があって丁寧なコミュニケーションを求めているようである。

「なかの人」には、企業ブランドを背負いながらも、Twitterユーザーが期待するイメージに寄り添うように、さらには良い方向に裏切るように、企業からのメッセージを再構成・翻訳することが求められる。

「なかの人」の責任は重く、意思決定者には覚悟が求められる。

人気の投稿